イン&アウト/第5回ニューウェーブ短歌コミュニケーション | ダストテイル-短歌と散文のブログ-

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イン&アウト/第5回ニューウェーブ短歌コミュニケーション

本日は歌葉新人賞授賞式兼ニューウェーブ短歌コミュニケーション。

加藤治郎・穂村弘・荻原裕幸というインターネット短歌を牽引してきた3人の「最後の」ディスカッション、ということで、これは絶対行かねば、と心に決めていた会である。

今回の受賞者である廣西さんの表彰式のあと、

第一部 鼎談「短歌は新人に何を求めるか」

     加藤治郎・穂村弘・荻原裕幸

第二部 「新人は短歌に何を求めるか」
    司会 穂村弘 
     生沼義郎・ひぐらしひなつ・石川美南・廣西昌也

という二部構成。
場で交された議論を、自分の印象からではあるが整理させていただきたいと思う。

前半のディスカッションでは、加藤治郎作成の「感覚の箱庭を越えて」
というレジュメを基調にして、三人で討論する形。

2001年から2006年までで出版された歌集をずらっと並べて、最近の短歌の状況について語っていく、というものだった。

ほぼ2001年から2004年までの間に、私が影響を受けて短歌を始めたきっかけになった方たちの第一歌集がずらっと並んでいることに驚く。

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2001年、飯田有子『林檎貫通式』、玲はる名『たった今覚えたものを』、加藤千恵『ハッピーアイスクリーム』

2002年、佐藤真由美『プライベート』、生沼義朗『水は襤褸に』、
黒瀬珂瀾『黒耀宮』、笹岡理絵『イミテイト』、佐藤理江『虹の片脚』

2003年、盛田志保子『木曜日』、魚村晋太郎『銀耳』、錦見映理子『ガーデニア・ガーデン』、笹公人『念力家族』、佐藤りえ『フラジャイル』、ひぐらしひなつ『きりんのうた。』、矢部雅之『友達ニ出会フノハ良イ事』、石川美南『砂の降る教室』、今橋愛『O脚の膝』

2004年、菊池裕『アンダーグラウンド』、斉藤斎藤『渡辺のわたし』

2005年、松木秀『5メートルほどの果てしなさ』、伊津野重美『紙ピアノ』、佐藤羽美『100の呼吸で』

2006年 宮野友和『バラッド』、兵庫ユカ『七月の心臓』

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「自分たちの世代のときと比べても格段に多い」という三氏の実感をもとにして、話が始まっていった。

加藤、荻原両氏は歌集のなかに出てくるものを修辞の側面から分析しようとしていたが、穂村氏は、歌壇自体の場の変容の問題としてこの「量の多さ」を捉えようとしていたようだ。

三氏とも、この問題を自分の論点にひきつけて論じようとしていたため、話自体は拡散したまま終わる。

「90年代は「修辞ルネッサンス」であり、水原紫苑、米川千嘉子、吉川宏志といった90年代までの歌人たちは、修辞と絡めて社会的な問題を歌う、という傾向が非常に強かった。あるいは、水原紫苑なら、「水原ワールド」というものが存在していて、歌人個々の作品世界が屹立している印象があった。ところが、2000年以降の歌人たちにはこの傾向がすくない。「自分の手の届く範囲のことだけを歌おう」といういわゆる「微視的小世界」の作品群に見える。」(加藤氏)

「米川、吉川といった歌人たちは、いわゆる歌壇のスーパーエリートといわれるような存在であり、ある時期までは、結社のなかである程度地位を認められないと歌集を出版できない、という傾向があった。現在ではほとんどそのようなものがなく、場の変容といわれるものが起こったのが、2000年以降の問題である。」(穂村氏)

「結社は新人に何を求めるか、という問題と、結社は初心者に何を求めるか、では大きく違う。私は初心者に短歌の話をするとき、「自分が歌っていて気持ちいい地点をはやく見つめなさい」ということにしている。ところが「新人」というのは、それとは異なり、いわゆる歌人集団のなかにどのような作品を投げ込むか、というポジショニングが求められる。」(荻原氏)

だいたいこのような基調講演のなかで、お互いの擦り合わせ作業が行われるが、修辞の側面と「場」の側面から論じようとする空気は埋め合わせられず。

ある地点で、いきなりほむほむワールドが炸裂する。

「いわゆる短歌共同体というのは、その新人が自分たちの「IN」にあるのか、それとも「OUT」にあるのか、という価値判断を行う。

新人たちが短歌共同体の「IN」にいるということを証明する手段というのが存在している。

 ① 他の人の書いた作品を読んでいますか?
 ② 歴史につながる覚悟がありますか?
 ③ 短歌にまつわる評論をかけますか?
 そして、ある地点になると、
 ④ 他の人を啓蒙していくという、啓蒙的な意志がありますか?

ということを、あるステップを踏んで試されていくことになる。もちろん、これに対しては全て100点で答える必要はないのだけれど、少なくとも60点程度でこなさなければ短歌共同体、いわゆる歌壇の「IN」にいる人だというのは証明されない。

最近は、2000年からの朗読ムーブメントの起こりや、インターネットの登場、アカデミズムの低下などで、このかつての場がゆるんできている印象がある。しかし、結局のところ、歌人はこの短歌共同体のなかに入ることを要請されている。

共同体というのは不思議なもので、このINなのかOUTなのかボーダーラインにいる人を内に取り込んでいこう、取り込んでいこうとする傾向がある。共同体自体は非常に賢い生き物で、INだけで存在するとその共同体は脆弱化していくことがわかりきっているので、たとえば馬場さんや岡井さんといった超一流の歌人たちは、ニコニコしながらボーダーラインにいる人をつかまえてきて、「君いいねぇ。君いいねぇ。」といってINに引っ張ってこよう、引っ張ってこようとする(笑)。基本的に超一流の歌人たちは、ボーダーラインにいる人たちが大好きだ。ところが、その下の二流の歌人みたいな人たちはボーダーラインにいる人たちを捕まえて「あんなのは短歌じゃない。短歌じゃない」という(笑)」


穂村氏の「自分は短歌共同体のINにいるのか、OUTなのか」という
まとめは非常に的確に場の雰囲気を掴み、みんな自分がINかOUTかという話にひっぱられはじめる。

それにしてもなぁ。穂村さんという人は、不思議な人だ。どの場所へいっても、必ず全体の人を納得させてしまう的確なものを持ってきてしまうからなぁ。「歌葉」のときの不気味スイート発言叱り。

いくつか、場についての問題提起がなされ、これがなかなか面白かった。

「朗読ムーブメントや、こういった形での批評会が興隆しているが、どちらかというとその「場」で全てが語られていく、という傾向が強くなったのが2000年以降。毎月の結社誌や総合誌からは、このような短歌についての議論というのは消える傾向にある。当然、批評会で語られることというのは全く記録に残らないので、若い世代が短歌についてどう考えているのか、というのが全く見えない傾向が強くなった。もしかすると、若い世代が短歌についてどう考えているのか、というのは、二次会の飲みの席上では語られているのかもしれないが、それは先行世代には全く見えない。」(加藤氏)

「ボーダーラインというのもいろいろと変容する。80年代に俵万智が出たときなどは、「こんなのは短歌じゃない」という「アウト」の判定が非常に多かった。ところが、ぼくが出てきたとき、「俵さんはいいけど、穂村は短歌じゃない」というようにボーダーラインがうつった。(笑)「最近になって枡野さんが出てきたので、穂村さんはまだいいけど、枡野はちょっと」という声が出てきて、ぼくは助かっている(笑)」(穂村氏)


「結局、IN(短歌共同体)とOUT(ネット短歌などの短歌共同体外のもの)が、2極化したままどちらもうまくいっていく、ということはないでしょうか」〈発言者失念)

「いやー。それはほとんど可能性としてはないような気がする。」(穂村氏)

「たとえば、枡野さんの歌論がでて、意外とあのムーブメントはふとっていくのかなぁ、と思っていたら、今はそれほどでもないような気もするしね」(加藤氏)

この辺の議論がなかなか面白かった。


今回、なんでこんな議論の途中経過報告みたいなことをしたのかというと、わたし自身も、それこそ加藤氏がおっしゃられるように、こういう「場」のなかで語られていく発言というのがまったく記録に残らず、忘却されていくことに強い危機感を覚えるものの一人だからである。

あくまで個人のまとめなので、2時間に及ぶ全ての議論を、整理し、記録していく作業を行うのはほとんど不可能だが、自分個人でできる範囲で、「あくまで重要な話が行われている」と感じているときにだけ、このような作業を少しずつ行っていこうと思う。

私自身もこれらの文章をまとめながら、少しずつ自分の考え方を整理していきたい。

このブログは、最近完全に題詠100首という本義から外れているような気がするが、私自身も、いわゆる文章という目に残る形で、世代の考え方が残され、共有化されていくことを強く希望している。

文章リテラシーを持つものの使命として、やっていきたい。

(自分の意見、まとめは第二部で)

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お読みいただいて、ありがとうございました。
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