魚村晋太郎第二歌集『花柄』批評会 | ダストテイル-短歌と散文のブログ-

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

魚村晋太郎第二歌集『花柄』批評会











先週の日曜日は神保町で、魚村晋太郎さんの第二歌集『花柄』の批評会。ほぼ満席の盛況ぶりで、やっぱり注目度の高い歌集なんだなあということが伺えた。

いつも批評会というと1時から始まるのが通例だと思うけど、何か事情があったのか午後2時から5時という時間になっている。パネリストもいわゆる「パネリスト」ではなく、「基調発言」という名前になっている。

ディスカッションの時間や会場発言の時間がその分減ってしまっていて、少し残念な感じがした。

その「基調発言」は穂村弘さん、花山周子さん、田中槐さん、島田幸典さん。途中でへろへろになってしまったため、議論の理解力にあまり自信がない。こんな頭で詳しく話をまとめるのは大変申し訳ないのですが、いくつかの問題が提示されていたように思うので、私なりの理解ながらまとめさせていただきます。

(また、歌集『滴る木』で有名な吉野亜矢さんがご自身のブログ「機敏な仔猫何匹」で、的確なまとめをされておられますので、詳しいまとめはぜひご覧ください。)

①第一歌集にはなかった、相聞的な甘ったるい歌を許容するかどうか

②文体の問題

①は、穂村弘さん、花山周子さんが特に「否定的」な立場にたたれておられ、会場発言はどちらかというと肯定的、また、田中槐さん、島田さんは「同情的」とおっしゃっておられたように思う。

たとえばこんな歌。

濡れた刃のにほひをふつとおもはせる肌、もういちど抱きよせるとき「尾翼」

嘘つきのスキンシップはあたたかくミルクは薄い膜を浮かべる「尾翼」

つらい夢を幾つも見たといふやうな顔して口を押しつけてくる「右手」

穂村さんいわく、「とてもレトリシャンとは思えないほど、いや、レトリシャンだからこそ類型的・通俗的」と指摘されていたが、第一歌集の『銀耳』とは違い、少し甘ったるい感じの類型的な把握が見られるというあたり。花山さんもたとえば

扉のない部屋に九月の陽はさしてゐててのひらをかさねるあなた「尾翼」

のような歌については、「「あなた」のあらわれ方が類型的で、歌の精気を損ねている。」というような指摘があったと思う。魚村さんの特徴は非常に重厚で「底光り感」(穂村弘)のする言葉の圧力にあるとすると、このあたりの「通俗・類型的な歌はまったく加点できない」というのが二人の類似した指摘だった。

②。
悪口ばかり先に書いてしまったのだけれども、本来の魚村さんの歌の持ち味は、こうしたメロウな感じの歌ではなく、非常に重厚で、質量を感じさせる言葉の圧力がある歌だと、僕も思う。

島田幸典さんはレポートのなかで、非常に独特の韻律感を指摘されておられた。

栞の紐がついてゐるのに伏せて置く本のページのやうに週末「右手」

たとえばこの歌の、「~のやうに/週末」の、部分に、なんとなく韻律が省略されているような感じ(もしこれが「やうな」だったら、そうは感じないだろう)を受けるという。

ぶつっ、ぶつっ、と言葉が省略されることで、名状しがたい「屈折感」を醸し出す手法だという。

文語旧かなで口語的に歌われることで、非常に名状しがたい、独特の重みをもった世界が展開されている歌集だという点では、全員共通していたように思われる。

最後に個人的に何首か。

基調発言のみなさんが取り上げておられた歌とも重なる部分が多い。
穂村さんは「岡井調」とおっしゃっておられたけど、僕もそう思った。重苦しい世界があらわれてくる。


感情のかたちをとらぬ容積が追ひ出しがたく窓の冬の木

僕たちは信じなかつた椅子たちの円卓からの自由、だなんて

あした降る雨の冷たさ冬彦の「馬」その他をコピーしながら

秋の水みたされてゐる望んでたことの多くはしなかつたけど

ドアが開けば矩形のひかりそのなかにあなたは脚を踏み出すだらう

そらされた目があつまつてゐる部屋に淡い質量をかかげて花は

通過する雨の広島トローチの感じがあをくまだ舌にある

問ひ質す声はモノクロ映像の banzai-cliff 何度も墜ちる

地図のうへ等高線の密になる傾(なだ)りかいたく蝉の声降る

ひいてみて、僕も、甘ったるくなっていく「あなた」の歌はどちらかというと苦手だ。
僕が好きな、非常にずっしりとした世界の重苦しさを表現した歌は、歌集前半に多いように思った。

----------------------------------------------------------------------
お読みいただいて、ありがとうございました。
もしこの記事がお気に召したら、ぜひブログランキングを拍手かわりにクリックしていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。


スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。