歌集 岡井隆『ネフスキイ』 | ダストテイル-短歌と散文のブログ-

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歌集 岡井隆『ネフスキイ』





岡井隆『ネフスキイ』





もはや誰も岡井隆を止めることは出来ないだろう。
岡井隆というひとはかいぶつである。

たぶん人間ではない。

なんだか皮膚もすこしにんげんらしくない。
ぺにゃぺにゃしている。

このままずっと歌を書け、と誰かが命じても、よろこんで書きそうな気がする。

いや、書くなといっても、書き続けるんだろうな。

いったい、いつまで書き続けるんだろう。岡井隆は。

1928年生まれだから、もう80歳か。

そういえば誕生日はぼくと一緒の1月5日だった。

もうちょっとで81歳になるだろう。

しかし、短歌の世界には年齢は関係がない。

今、短歌界のなかで、もっとも元気な歌人を言え。

と言われたら、文句なく「岡井隆」と言うだろう。

もっともクリエイティブな歌人を言え。

と言われたら、やっぱり「岡井隆」と言うだろう。

そのくらい岡井隆はすごい。

人間ばなれしている。
というか多分もう人間ではない。

なんだか最近、そんな岡井隆に、「もういい加減にしてくれ~」と思いはじめ
ている。

僕は、2年前に短歌の結社というところにはいった。

(岡井隆は、ぼくの入っている未来短歌会というところの主宰をしているので、
ぼくの短歌のうえでの師匠の師匠ということになる)

会員になって驚いたのは、
入会すると、必ずその岡井さんから、歌集を出版するたびにダイレクトメール
がとどくということだ。

「この度、歌集○○を上梓しましたのでどうぞよろしく買ってください」

みたいなやつだ。

最初のころは、「あ、岡井先生の歌集だ。買わなきゃ買わなきゃ」

とおもってほいほい買っていたのだけど、途中になって、だんだん腹が立っ
てきた。

だって、本の出版ペースが、とても人間のなす技とは思えないくらいハイペー
スなんだもん。

去年だったか、『2006年水無月のころ』を出版したかと思ったら、冬場には
『家常茶飯』という歌集を出していた。

その前に確か 『初期の蝶/近藤芳美をしのぶ会以後』という歌集も出して
たっけ。

さらにさらに、歌集以外では『わかりやすい現代短歌入門』などというよくわか
らない入門書を出し、さらには詩集『限られた時のための二十四の機会詩』を
出した。『新輯けさのことば』なんていう分厚い本もある。そういえば『現代詩入
門』なんてのも出してたな。。。(ちっともわかりやすくなかったけど…)

そのたびに、「このたび○○という本を上梓しました…」

とかいうハガキがくる。。。;

おいおいおい。一体、何冊出せば気が済むのだ。
このおじいちゃんは。

「なんか去年はすごかったねー。岡井さんの本すごい勢いだったね-」

なんて仲間うちでいいあって、

「やれやれ…。ようやく一段落したか…」

と言った矢先である。

またしても岡井隆の最新歌集『ネフスキイ』が出たのである。

げげげっ。である。。。

ぼくなんて、毎月10首つくって1年で120首。

がんばって3年で400首くらいつくって、そこから半分くらいけずって
ようやく200首。

それでやっと1冊になるかならないかというのに、この人は、1年で
歌集3冊もだしちゃってる。

そのあとに、また歌集をだすとは。。。

なんかこの前、「本を同時に何冊も出すと、疲れちゃって…」みたいな
ことを大会かなんかで言ってなかったか。

うーん。

歌集は高い。

今回は、一冊3500円もする。

買うか、買わないか。と思って迷ったが、やっぱり買ってしまった。

届いて、さっそく封を切る。

「いつになく瀟洒なデザインだなあ」

とかいって、手に持つ。

いつになく分厚い。

「ひ、ひえー。840首も入ってるのか、この本」

このげんなり感がわかるだろうか。

それは作る側にとっても、一年で3冊歌集作ってそのあと840首
作るのは大変だろう。

しかし、読む側のことも考えてほしい。。。

400ページ近くもある分厚い歌集(ほとんど辞典だ)をめくりながら、
とっても疲れているのである。

なんなんでしょう。岡井隆は。どうやって歌を作ってるんだろう。

あとがきによると、2006年8月16日から2007年8月17日まで
、毎日数首ずつ歌を作っていたという。

それでも半分くらい入れなかったといっているから、一年で1500首
くらい作っている計算になる。

うむむむ。多作すぎる。。。

ちょっとげんなりしながらも、じゃあその840首はクズか。というと、
ちっともそうじゃないのだ。

ちょっと何首かひいてみよう。



・うつし世は秋のくらがりへ入りゆきてその入口のゆるやかな坂

・ひろげある本のあひだに紙のべて歌書かむとす、寄り道は善

・好きでない詩人の詩集 向うから差し込まれたる鍵の重たさ

・やはりしづかに撫づるのがよい下りて来た荒いけだものの背であるにせよ

・照らされてゐる絶壁が数十個(いや、もつとかな)心つて場所は

・夕日づかれといつてもいいか長き影先立てて帰る黄いろの刻(とき)を

・展望台みたいなところが一日のどこかには在る 正午の車中

・凶暴な気持に少しかたむいてゐるそれなのに底はしづかだ





840首もあると、引用が大変なのだけど、どの歌もさらさらっとしていて
読みやすい。

あえてちょっと明るめの歌を選んでみたけど、なんだかわかりやすいじゃ
ないか。

すごくものごとを軽くつかんで歌っている感じがする。
それでいて、決して一首一首は軽くはない。

とっても人生のふかいところまで掴んで歌っている。

ぼややーんとしながら、すごくゆたかな読後感があふれている。

うーむ。

やはり岡井隆は人間じゃないかもしれない。。。

歌人たるもの、80歳にもなると、浮世離れしてすらすらすらっと
歌が出てくるようになるんだろうか。

いやー。

今回の歌集も、実際間違いなく「買い」に入る歌集だ。

むしろ、去年の3冊よりずっと完成していて、トーンが統一されている。

もしかすると、この840首。

岡井隆の後期の大きな仕事の一つになるかもしれない。

そんな感じがしている。

(それにしても、もうつかれたよ)

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