嵯峨直樹歌集『神の翼』を読む | ダストテイル-短歌と散文のブログ-

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嵯峨直樹歌集『神の翼』を読む

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2008年10月30日に刊行された嵯峨直樹さんの第一歌集『神の翼』を読む。嵯峨さんは第47回短歌研究新人賞も受賞されていて、その作品も収めている。経歴をまとめるのはあまり好きではないが、嵯峨さんは1971年生まれ。1994年に「未来」に入会しているから、作品としては14年間の歌業を一冊に凝集したという歌集なのだ。

どれも一読して、わかりやすい、現代の口語で書かれているが、その作品世界が持っている文体的な奥深さ、内省的な歌の深みは、なかなか並大抵のものではない。

ニューウェーブを通過したこれからの口語短歌の、ひとつのあり方を提示しているように思った。どうも今日は僕自身、わかりにくい評論調の文章で書いてしまっているが、そのくらい読み手の背筋が伸びた歌集だということになる。

いいと思った歌をあげてみる。



・霧雨は世界にやさしい膜をはる 君のすがたは僕と似ている

・人間のぬるい体に指を入れ。やっぱりここも、袋小路だ

・海音にふたりの部屋は閉ざされてもういい何も話さなくても





冒頭近くの3首。この歌集の基底音とでもいうもので、「閉ざされて」いる感じ、「膜」、「袋小路」といったキーワードが、水や雨と一緒に出てくる。わかりやすい言葉で書かれているけど、韻律はそれほどきれいになめらかにすすまない。「やっぱりここも、袋小路だ。」というくぐもった感触。「もういい何も話さなくても」という無力感をともなった句跨り。ややエロティックで、それでいて閉じている。作者個人の感触であると同時に、かなり私たちの時代につながった内向的な詠いぶりだと思う。



・万札を吸い込むだけの機械だろアホなサインをちかちかさせて

・弱くてもいいそんなに弱くては生き残れない 魚をほぐす

・霧雨の降りしきる路 終バスは名前の消えたバス停に着く

・コンビニに正しく配置されているあかりの下の俺は正しい

・朝おきて泡たてながら歯をみがくまだ人間のつもりで俺は

・リンス、リンス、犬の名前にちょうどいい香りだ君の女ともだちは





どの歌も、無力感とそこからくる怒りのような感触につかまれた歌たちで、一読して印象に残った歌をひいてみた。難しいところはあまりない。全部韻律の感触と、歌いぶりだけで見事に表現している感じがする。

これから歌集評が続々と出てくるのだろうけれど、内向的で静謐な印象を持った歌の数々を、ぼくはとても好きだと思った。

残念ながら歌集のほうはまだ書店には並んでいないらしく、短歌研究社か著者からしか買う方法はないらしい。短歌研究社にリンクを貼っておくことにする。

そのうちamazonかBK1にアップされる可能性がある。1800円という価格もふくめて、今年の歌集としてはかなり魅力に富んだ歌集なのではないかと感じた。

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