セクシャル・イーティング | ダストテイル-短歌と散文のブログ-

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セクシャル・イーティング

今日は短歌を小休止して、今WEB上でもっともあつい歌をご紹介します。

『セクシャル・イーティング』は、石川美南さん、今橋愛さん、永井祐さん、光森裕樹さんの四人が、毎日ご自身の食生活をさらし、毎月ご自分の歌を披露するというなんだかよくわからない企画なのですが、9月の歌が、とにかくあついです。

お互いがお互いの歌に触発されて、突然変異したようにすさまじい歌が出始めた感じといいましょうか。

おそらく若手のなかで今もっとも力のある人たちだと思います。
ぜひ、ごらんください。

あまりにすごいので、
つたないですが、評を書いてみることにしました。

【石川美南さん】

今月は連作巧者として持ち味が冴えわたっており、歌としても完成度が高し。

・営業職の人らほどよくかしこまり帽子交換してをり真昼

「ほどよく」がほどよく効いて、韻律に加速感を与える効果をだす。10首単位の連作では3首目くらいが勝負歌になることが多いが、さすが。

・わらわらと揺れる前髪 コーヒーをやめた理由ははぐらかされつ

ドラマを想像させる歌で、こういう歌がうまいから石川さんの連作は見てて楽しい。
「つ」がうまいなあ。「つ」が。

・ささやかな小学校へかよひにき紅白帽の白を好んで

この「き」は、おそらく現存する歌人のなかで誰もこの味をだせない「き」ではないか。「口語でも文語でもない」といわれる独特の味わい。

・かぶつては見知らぬ人に手渡して果てもなし夕雲・キャスケット

「夕雲・キャスケット」透明感のあるひびきと、夕雲がうまくおりあわさって、独特の読み応えがある秀歌。

【今橋愛さん】

持ち味の「子供みたいな口語で、ぶっきらぼうにひどいことを言う」黒魔術師の魅力が全開。

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鍵束がいくつもでてきて
どの鍵も あかないのです。


なんの かぎなの


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夏か分からない夏のおわりに
かさぶたをたべても

なにもかわらなかった。


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二首とも、ある切実さを、こめている。一首目は、「どの鍵も あかないのです」という微妙な韻律。二首目は、「かさぶた」。

持ち味の字あけ行あけが生きている。
「空間芸」とでも名付けるしかない。

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ぶーらんこぶーらんこゆれる
かたかたと
すべてのことはなかったように


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改行のところで一度、
詠み手は立ち止まる。

その立ち止まる速度が、
すこしずつ
違うので
わたしたちはその立ち止まりに詩をかんじて
これらの歌に立ち止まるのだろう。

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あなたってひとりでないてる犬みたい
どうぶつみたい
犬もしにます。


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すごすぎて僕もしんじゃいそうです。

【永井祐さん】

イメージをリズムに乗せて次々と飛ばす歌に、独特の冴えがある。
口語にリアリティを出すあたらしい方法を駆使する歌人として、これ
からも注目していきたい人。

・冷やし中華はけっきょく一度だけ食べて何も言わずに夏を過ごした

・掃除をすっかりしたら気分が晴れている排水口はぼくと通じる

・ボールペン出して金髪のばあさんがぼくの手帳に丸を描くこと

・鼻をすすってライターつけるおいしいなタバコと思って上を向く

どの歌も成功している。つながっているようなつながっていないような
言葉を、機関銃のように次々と速射する。かるい破調が、名詞に圧力
を与える。この笑っていいのか笑ってはいけないのかよくわからない
淡々さは、いったい何なのだ。

【光森祐樹さん】

今回、一番すごいと思った人。

・手を添へてくれるあなたの眼の前で世界をぼくは数えまちがふ

・ゑのころを照らす停留所にいつか乗ることのないバスが来てゐる

旧仮名のじんわりとしたゆるい抒情を生かす歌人は多いが、光森さん
と石川さんの旧仮名は凡百の歌人とは大きく違う。光森さんの場合は、
どこかなつかしいナイーブな感覚が、旧仮名にゆるくつつまれて伝わっ
てくる感じがある。言葉の感受性の冴えは、まぎれもない。

・アルペヂオ おお、あるぺぢお! 僕だけがマルクをレンテンマルクに替へて

・とめどなく仔犬をかつてしまふだらう 秋夜に子犬 こいぬ たくさん

「マルクをレンテンマルクに替へて」

の意外な言葉の選択と、

「子犬 こいぬ たくさん」

のリフレインがもたらす切実な感じ。いずれも、言葉の力を生かす術をこころえているとおもう。
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